親の預金が凍結…? 施設入所で困る前に知っておきたい「任意後見」

「父が認知症になってしまって……」 そんな切実なご相談をいただくことがあります。

ご自宅での生活が難しくなり、ご家族で話し合って施設への入所を決めたそうです。

「入所の一時金は、父の預金から支払おう」 そう思って銀行へ行ったところ、窓口でこう言われました。

「ご本人の判断能力がない場合、原則としてお引き出しはできません」

お父さんのためのお金なのに。家族なのに。 どうしていいか分からず、途方に暮れてしまった……というお話でした。

なぜ家族でもお金が下ろせなくなるの?

「家族を疑っているの?」と感じるかもしれませんが、実はこれ、ご本人の大切な権利を守るためのルールなのです。

お金はあくまで「ご本人のもの」。 判断能力が十分でないと、「自分の意思で手続きをした」と認められないため、たとえご家族であっても勝手に動かすことができなくなってしまうのです。

このお父さんは、実は元気なうちに「遺言書」を準備されていました。 「家族に迷惑をかけたくない」という優しい思いからです。 ただ、「生きている間に判断能力が低下した場合」の備えまでは、考える機会がなかったのです。

※遺言書があっても起こりうるトラブルについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

遺言書があっても安心できない?遺留分トラブルと対処法を解説

元気な今だからこそ選べる「任意後見」

判断能力が低下した後に、家庭裁判所に申し立てをしてサポート役を決めてもらう「法定後見」という制度もあります。 しかし、これには「家族が選ばれるとは限らない」「裁判所への報告が続く」といった面もあります。

そこで、元気なうちに検討していただきたいのが「任意後見(にんいこうけん)」です。

これは、「将来、もし自分の判断力が落ちたら、この人にお願いしたい」と、あらかじめ自分で相手を決めて契約しておく方法です。 信頼できる人をご自身で選べるのが、一番の安心材料になります。

「まだ早いかな」と思われるかもしれませんが、体調の変化は突然やってくることもあります。元気な「今」だからこそ、ご自身の意思で未来を決めておくことができるのです。


未来の安心セット:4つのサポート

「任意後見」以外にも、状況に合わせて組み合わせられるサポートがあります。 お体の状態に合わせて、段階的に備えるのがおすすめです。

① 見守り契約(元気なうちの安心) 一人暮らしの方や、ご家族が遠方に住んでいる方に適しています。 定期的な訪問や電話で、体調や生活に変わりがないかを確認します。孤立防止や、詐欺・無理な勧誘から守る効果もあります。

② 財産管理等委任契約(体が不自由になった時の安心) 「頭はしっかりしているけれど、足腰が弱くて銀行や役所に行けない」という時期を支えます。預金の管理や施設の支払い、入院手続きなどを代理で行います。

③ 任意後見契約(判断能力が落ちた後の安心) 認知症などで判断が難しくなった後、あなたに代わって法的な手続きを行います。

④ 死後事務委任契約(亡くなった後の安心) 葬儀の手配、お部屋の片付け、SNSの解約など、亡くなった直後の「現実的な片付け」を担います。


まずは「おしゃべり」から始めませんか?

「何から考えればいいか分からない」 そんな段階でご相談いただくのが、実は一番良いタイミングです。

まずはご家族で、将来のことを少しだけお話ししてみてください。 もし分からないことがあれば、私がお力になります。

エンディングノートに興味がある方は、こちらの記事も参考にしてみてくださいね。

エンディングノートが書けない方へ|一言から始める終活

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