相続人に生活保護受給者がいる場合どうする?手続きが進まない理由と対処法

はじめに

被相続人が亡くなり、いざ相続手続きを進めようとしたところ、相続人の中に生活保護受給者がいて手続きが止まってしまったというご相談をいただくことがあります。

受給者本人が
「自分は生活保護だから何もいらない」
「相続には関わりたくない」
と話し合いを拒否してしまうケースも少なくありません。

しかし、「本人がいらないと言っているから放っておけばよい」というわけではありません。

適切な手続きを踏まなければ、不動産の売却や預貯金の解約などの相続手続きが進められなくなる可能性があります。

この記事では、生活保護受給者がいる相続でなぜ手続きがスムーズに進まないのか、
その背景にある事情と、トラブルを防ぐための現実的な対処法を解説します。


生活保護受給者が「相続に関わりたくない」と拒絶する3つの理由

一般的な感覚では、
「数百万円、数千万円の遺産を受け取れるなら生活保護を卒業できるのでは?」
と思われるかもしれません。

しかし、当事者にとっては事情が異なります。

生活保護を受給している方が相続を避けたがる背景には、制度特有の不安や恐怖があります。

① 一度保護を離れたら戻れないかもしれないという不安

これが最も大きな理由です。

生活保護の申請に至るまでには、経済的な困窮だけでなく精神的な負担も伴います。

窓口での相談や各種調査、親族に対する扶養照会(援助が可能か確認する手続き)などを経て、ようやく受給に至っている方も少なくありません。

そのため、
「遺産を受け取って保護が終了した後、お金を使い切ったら再び保護を受けられるのだろうか」
という不安を抱える方がいます。

目先の遺産よりも、現在の生活の安定を失うことへの恐怖の方が大きいのです。

② 生活保護制度による生活上の制約への不安

生活保護にはさまざまなルールがあります。

たとえば、自動車の所有は原則として認められておらず、預貯金額にも一定の制約があります。

現在ではエアコンの設置や保有も認められていますが、生活保護に対して厳しいイメージを持っている受給者も少なくありません。

そうした状況の中で生活を維持しているため、相続によって現在の生活環境が大きく変化することに強い不安を感じることがあります。

③ 本人が「いらない」と言っても役所が認めないことがある

生活保護制度には「資産活用の原則」があります。

そのため、本人が
「自分の取り分は兄弟に譲る」
「遺産は受け取らなくていい」
と考えていても、ケースワーカーから
「取得できる財産は適切に受け取って生活に活用してください」
と指導される場合があります。

その結果、当初は「何もいらない」と言っていた相続人が途中で方針を変更し、親族間のトラブルに発展することもあります。


【実情】知っておくべき生活保護と相続のルール

感情的な対立を避けるためにも、まずは制度上のルールを理解しておくことが重要です。

相続財産は収入として扱われる

生活保護受給者が遺産を取得した場合、その財産は収入として扱われます。

取得額によっては、生活保護が一時的に停止されたり、廃止されたりすることがあります。

相続放棄はできるが、生活保護上の問題になることがある

家庭裁判所で行う正式な相続放棄は法律上認められています。

しかし、十分な財産があるにもかかわらず相続放棄をした場合、福祉事務所から資産活用義務との関係で問題視される可能性があります。

また、遺産分割協議で「自分は何も取得しない」と合意することも法律上は可能です。

ただし、本来取得できる財産を受け取らない内容とした場合も、福祉事務所から問題視される可能性があります。

そのため、
「生活保護だから相続分をゼロにすればよい」
と単純に考えるのではなく、事前にケースワーカーへ相談しながら進めることが大切です。

※借金の方が多い場合や、遺産が少額で生活の自立に大きな影響を与えない場合には、相続放棄をしても保護が継続されるケースがあります。


手続きが進まないときの3つの対処法

① ケースワーカーへ事前に相談してもらう

まずは受給者本人を通じて、担当ケースワーカーへ相談してもらうことが重要です。

事前に方針を確認しておくことで、後から役所の指導によって話が覆るリスクを減らすことができます。

② 正式な相続放棄をしてもらう

遺産が少額である場合などは、家庭裁判所で正式な相続放棄をしてもらう方法があります。

単なる口頭の「いらない」は法的効力がありません。

相続放棄は原則として相続開始を知った日から3か月以内に行う必要があります。

なお、この場合も事前にケースワーカーへ相談することが望ましいでしょう。

③ 遺産分割調停を利用する

どうしても話し合いに応じない場合には、家庭裁判所の遺産分割調停を利用することになります。

調停や審判によって相続分が確定した結果、取得した財産額によっては生活保護の停止や廃止につながる可能性があります。

親族間で解決できない場合には、弁護士への相談が必要になるケースもあります。


感情論ではなく制度を理解することが大切

生活保護受給者がいる相続では、
「関わりたくない」
「なぜ協力してくれないのか」
という感情的な対立が起こりがちです。

しかし、その背景には生活保護制度に対する不安や将来への恐怖が存在することも少なくありません。

相続手続きを円滑に進めるためには、相手の事情を理解しながら、制度上どのような対応が可能なのかを冷静に整理することが大切です。

状況によっては弁護士や福祉事務所との連携が必要になるため、早めに確認しておくことをおすすめします。


まとめ

生活保護受給者がいる相続では、制度上の制約や将来への不安から、本人が相続手続きへの参加を拒むことがあります。

しかし、「関わりたくない」「何もいらない」という意思表示だけでは相続手続きは進みません。

相続放棄や遺産分割協議にも生活保護制度上の注意点があるため、まずはケースワーカーへの相談を行い、必要に応じて専門家のサポートを受けながら進めることが重要です。

相続人の一人が生活保護受給者で手続きが進まない場合、状況によっては弁護士や福祉事務所との連携が必要になります。

相続手続き全体の進め方でお困りの場合は、お気軽にご相談ください。

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