「家を残せば安心」ではありません|“親亡き後”に私が見た現実

こんにちは。
神奈川県秦野市の行政書士、安居院麻紀(あぐいまき)です。

今日は、私がこれまでの仕事の中で実際に出会った、あるご相談についてお話ししたいと思います。

4コマ漫画。親亡き後に一人残された子どもの将来について、財産を残すだけでは安心できない現実と、事前準備の大切さを伝える導入漫画。

個人が特定されないよう内容は一部変更していますが、「親亡き後問題」を考える上で、とても大切なことだと感じています。

親が亡くなった後、一人になったお子さん

私が出会ったのは、知的障害のある方でした。

ご両親はすでに他界されており、ご本人が一人で生活されていました。
立派な持ち家もあり、ご両親はきっと、「この子が困らないように」と、一生懸命財産を残されたのだと思います。

しかし、現実はとても厳しいものでした。

ご本人は、お金の管理がうまくできない状態だったのです。

訪問販売や外壁塗装など、今思えば悪質業者だったのではないかと思われる契約も複数ありました。
必要のない工事に高額なお金を支払い、気づけば財産は少しずつ減っていってしまいました。

不動産は「資産」である一方、管理できなくなると大きな負担になることもあります。
実家相続で起こりやすい問題については、こちらでも解説しています。
なぜ実家相続は揉める?不動産しかない家庭で起きやすい争族

家の中は、足の踏み場もない状態でした

私がご自宅を訪問した時、家の中は物であふれていました。

親御さんが亡くなった後、掃除や片付けが難しくなっていたのだと思います。

食事や健康管理も十分とは言えず、孤立している様子も感じました。

でも、ご本人に悪気があるわけではありません。

誰かを困らせたいわけでも、浪費したかったわけでもないのです。

ただ、「どう管理すればいいか」が分からなかった。
そして、相談できる人や、見守ってくれる人がいなかったのです。

財産がほとんどなくなった時、ようやく支援につながりました

残りの預金がわずかになった頃、福祉や行政の支援が入ることになりました。

その後、保佐人が選任され、不動産を売却。
ご本人はグループホームへ入居されることになりました。

後に街で偶然再会した時、その方は以前よりずっと健康的な表情をされていました。

適切な支援につながることで、生活は立て直せる。
私はその姿を見て、少し安心したのを覚えています。

でも同時に、こうも思いました。

「もっと早く支援につながっていたら、違う未来もあったのではないか」

「家を残すこと」と「暮らしを守ること」は別問題です

親御さんとしては、

「家を残してあげれば安心」
「財産を残しておけば大丈夫」

そう思われるかもしれません。

「とりあえず法定相続分で分ければ安心」と思われがちですが、実際にはそれだけでは解決できない問題もあります。
相続と“その後の暮らし”について考えることがとても大切です。
エンディングノートの「法定相続分で分ける」に安易にチェックを入れてはいけない理由

もちろん、それは深い愛情です。

ですが実際には、“財産を残すこと”と、“その後も安心して暮らせること”は、必ずしも同じではありません。

特に、

  • 障害のあるお子さんがいる
  • お金の管理に不安がある
  • 一人暮らしになる可能性がある
  • 周囲に頼れる親族が少ない

という場合には、「親亡き後」を見据えた準備がとても大切になります。

元気なうちから、福祉や支援とつながっておくこと

成年後見制度、保佐制度、見守り支援、福祉サービス、グループホーム――。

こうした制度は、「自由を奪うもの」ではなく、その人の生活や財産を守るための仕組みです。

本当に必要なのは、問題が起きてから慌てて動くことではなく、元気なうちから少しずつ支援につながっておくことなのかもしれません。

判断能力が低下した後の備えとして、「任意後見」という制度があります。
親御さんが元気なうちに準備しておける制度については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
親の預金が凍結…?施設入所で困る前に知っておきたい「任意後見」

親御さんが元気な間は、どうしても「自分が見てあげれば大丈夫」と思いがちです。

でも、順番でいえば、いつかは子どもを残して親が先に旅立つ可能性が高い。

だからこそ、

「自分がいなくなった後、この子はどう暮らしていくのか」

そこまで考えて準備しておくことが、とても大切なのだと感じています。

まずは「今後どうしていく?」を話すところから

大きな契約や難しい制度の話ではなく、まずは、

  • 誰が見守るのか
  • どこで暮らすのか
  • お金をどう管理するのか
  • 困った時、どこへ相談するのか

そんなことを、ご家族で少しずつ話してみるだけでも十分な第一歩です。

「何から考えればいいか分からない」という方は、まずエンディングノートから始めるのもおすすめです。
完璧に書こうとしなくても、“家族に想いを残すこと”が大切な第一歩になります。
エンディングノートが書けない方へ|一言から始める終活

「まだ早いかな」と思う時期こそ、実は一番大切なタイミングかもしれません。

将来への不安や、「何から考えればいいのか分からない」という段階でも大丈夫です。
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