親が認知症になったら預金は引き出せない?家族信託と任意後見契約の違いを解説

「父も80歳を超えたので、今後のことが心配です。何か準備をしておいた方がいいのでしょうか?」

先日、50代の男性Gさんからこのような相談を受けました。

お父さんは80歳。
3年前に奥様を亡くされ、現在は自宅で一人暮らしをしています。

ご近所の方にも助けてもらいながら生活を続けていますが、年齢を考えると今後が心配とのことでした。

財産は、

・ご自宅
・預金約1,000万円

とのこと。

一見すると、
「施設に入るお金もあるし、自宅もある。特に問題はなさそう」
と思われるかもしれません。

しかし、実は大きな落とし穴があります。

問題なく施設に入れるケース

お父さんが元気なうちに、
「一人暮らしが大変になってきたから施設に入りたい」
とご自身で判断できる状態であれば、大きな問題はありません。

預金から入所費用を支払い、必要であれば自宅を売却することもできます。

ところが、問題は認知症になってしまった場合です。

認知症になると何が起こるのか

例えば、

・買い物に出かけたまま家がわからなくなる
・火を消し忘れてしまう
・お金の管理ができなくなる

このような状態になると、一人暮らしを続けることは難しくなります。

ご家族としては、
「早く安全な施設に入ってほしい」
と考えるでしょう。

ところが、ここで思わぬ壁にぶつかることがあります。

お父さんのお金なのに使えない?

ようやく入所先が決まり、施設費用を支払おうとしたとします。

その時、金融機関がお父さんの判断能力の低下を把握すると、預金の払い戻しが制限されることがあります。

すると、
「お父さんのお金を、お父さんのために使いたい」
だけなのに、自由に引き出すことができなくなってしまうのです。

さらに、自宅を売却して施設費用に充てようとしても、お父さん本人が契約できない状態であれば売却も難しくなります。

このような事態に備える制度として、

・家族信託
・任意後見契約

があります。

なぜ家族でも自由に預金を下ろせないの?

「子どもなのだから、親の口座からお金を下ろせるのでは?」
と思われる方も少なくありません。

しかし、預金は本人の財産です。

たとえ家族であっても、本人の判断能力が低下していると金融機関が判断した場合には、
本人保護の観点から払い戻しが制限されることがあります。

そのため、施設費用や医療費の支払いに困ってしまうケースもあるのです。

家族信託とは?

家族信託とは、元気なうちに財産管理を信頼できる家族に任せておく仕組みです。

例えば、

父親を「委託者」、長男を「受託者」として信託契約を結ぶことで、信託した財産については受託者が管理・運用できるようになります。

具体的には、

・信託した金銭を信託口口座などで管理し、施設費用などの支払いを行うこと
・信託した自宅を売却すること

などが可能になります。

家族信託が向いている人

家族信託は賃貸アパートなどの収益不動産を持っている方によく利用されます。

なぜなら認知症になると、

・賃貸借契約の更新
・修繕契約
・建替え
・売却

などができなくなるからです。

しかし、収益不動産がなくても、

・将来施設に入る可能性がある
・自宅を売却するかもしれない
・認知症による口座凍結が心配

という方には有効な選択肢になります。

Gさんのお父さんのケースも十分に検討する価値があるでしょう。

任意後見契約とは?

任意後見契約とは、
「もし将来認知症になったら、この人に支援してもらいたい」
という約束を元気なうちにしておく契約です。

ただし、契約しただけでは効力は発生しません。

実際に認知症などで判断能力が低下した後に、家庭裁判所へ申立てを行い、任意後見監督人が選任されて初めて効力が発生します。

その後、任意後見人が財産管理や契約手続きなどを行い、本人の生活を支援していくことになります。

家族信託と任意後見契約の違い

よくある質問が、
「家族信託と任意後見契約は何が違うのですか?」
というものです。

簡単に言うと、

【家族信託】
元気なうちから財産管理を任せられる

【任意後見契約】
認知症になった時に初めて効力を発揮する

という違いがあります。

どちらが良いというものではなく、
ご家庭の状況や目的によって選択が変わります。

成年後見制度との違い

ここで混同しやすいのが成年後見制度です。

成年後見制度は、すでに認知症になってしまった後に利用する制度です。

成年後見制度では、家庭裁判所が選任した成年後見人等が本人を支援します。

つまり、
家族信託や任意後見契約は「事前の備え」
成年後見制度は「認知症になった後の対応」
という違いがあります。

それぞれの制度はいつ役立つ?

親の老後を時系列で整理するとわかりやすくなります。

【元気な今】

・遺言書
・任意後見契約
・家族信託

   ↓

【認知症になった後】

・成年後見制度

   ↓

【亡くなった後】

・相続手続き
・遺言執行
・預金解約
・不動産の名義変更

このように、それぞれ役立つ場面が異なります。

まとめ

「まだ元気だから大丈夫」

そう思っていても、認知症はある日突然問題として現れます。

実際には、

・施設に入りたいのにお金が引き出せない
・自宅を売りたいのに売れない
・契約手続きが進まない

というケースも少なくありません。

大切なのは、元気なうちに準備をしておくことです。

ご家庭によって必要な制度は異なります。

ご自身やご家族に合った方法を知りたい方は、お気軽にご相談ください。
行政書士あぐいまき事務所では、相続・遺言・任意後見契約・家族信託など、生前対策に関するご相談を承っております。「何から始めればいいかわからない」という方も、お一人で悩まずお気軽にご相談ください。

元気な今だからこそできる準備が、将来のご本人とご家族の安心につながります。

LINEからも受け付けております。
「ちょっと聞いてみたい」という内容でも大丈夫です。

あわせて読みたい