遺言書はいつ書くべき?60代から始める相続対策のタイミング

先日、60代半ばの方とお話しする機会がありました。

相続の話題になったとき、その方はこんなふうにおっしゃいました。

「相続はまだまだ先の話。80代になって、自分の判断能力が怪しくなってきたときに考えればいい。今、遺言なんて書けないよ。だって、これから誰がどれだけ面倒を看てくれるかによって、配分は変わってくるんだから」

この言葉を聞いたとき、正直に言うと、私はすごく納得しました。


「助けてくれた人に、ちゃんと残してあげたい」という気持ち

「助けてくれた人に、きちんと報いたい」
これは、とても自然で、人として当たり前の感情です。

たとえば、奥さまが介護をほとんどできない状況の中で、長男の奥さまが献身的に支えてくれたとしたら、
その方に多く残したいと思うのは、無理もないことです。

遺言書で配分に差をつけること自体は、法律上も可能です。
(※遺留分には注意が必要ですが、この範囲内であれば有効です)

遺言書を書くタイミングは人それぞれです。遺言書を書くタイミングについて詳しくはこちらの記事で解説しています。

遺言を書く際に注意したいのが遺留分です。基本とトラブル回避のポイントはこの記事で解説しています。


それでも、「明日の保証」は誰にもない

一方で、そのお話を聞きながら、私の頭の中にずっと残っていた言葉があります。

「明日、生きている保証は誰にもない」

これは決して脅しではありません。
ただの事実です。

「80代になってから考えればいい」という計画は、
・その時まで元気でいること
・判断能力がしっかりしていること
この2つが揃って初めて成り立ちます。

しかし現実には、突然の病気や事故、認知症の進行によって、
その「タイミング」自体が失われてしまうこともあります。

「まだ先」と思っていたはずのことが、
ある日突然、「もうできないこと」になってしまう可能性もあるのです。

判断能力に不安が出たときの備えとして、任意後見制度についてはこちらで詳しく解説しています。


若い世代も、決して他人事ではない

「相続なんて、まだ関係ない」
そう思っている方も多いかもしれません。

でも、自分の親に対して
「遺言を書いておいてほしい」と感じたことがあるなら、
それはもう“相続の当事者”です。

「どう切り出せばいいかわからない」というご家族からのご相談も少なくありません。
ご両親への伝え方については、こちらの記事でもお話ししています。
「遺言を書いて」が親を傷つけることもある|専門家が感じる“伝え方”の大切さ

実際、遺された側の負担は、
事前の準備があるかどうかで大きく変わります。


「必要だ」と感じたときに、人は初めて動く

今回お話しした方に、私は
「今すぐ遺言を書きましょう」とは言いませんでした。

必要だと感じていない方に、どれだけ正しいことを伝えても、心には届かないからです。

「エンディングノートなんて面倒くさい」
その一言で終わってしまうことも、珍しくありません。

「何を書けばいいかわからない」という方は、まずは一言だけでも大丈夫です。
エンディングノートについては、こちらの記事でもご紹介しています。
エンディングノートが書けない方へ|一言から始める終活

人は、自分にとって必要だと感じたとき、
あるいは何か大きな出来事があったときに、初めて動き出します。

だから私は、その方の考えを否定しませんでした。

ただ、心の中でこう思っていました。

そのタイミングが来たとき、
一番いい形でお手伝いできるように、準備をしておこう。


それでも、60代の方に伝えたいこと

無理におすすめするつもりはありません。

ただ、一つだけお伝えしたいことがあります。

遺言書やエンディングノートは、
「死の準備」ではありません。

「今の自分の気持ちを整理するもの」です。

そして、それは一度書いたら終わりではなく、
気持ちが変われば、何度でも書き直すことができます。

だからこそ、
「今この時点での想い」を書き留めておくことには、大きな意味があると私は考えています。


あなたが「そろそろ考えてみようかな」と思ったそのときに、
私はいつでも、ここでお待ちしています。

LINEからも受け付けております。
「ちょっと聞いてみたい」という内容でも大丈夫です。

関連記事