再婚した夫が遺したもの|会ったことのない相続人との相続手続き

こんにちは。
行政書士の安居院(あぐい)です。

相続のご相談を受けていると、法律だけでは割り切れない人の想いに触れることがあります。

今回は、私が以前関わったご相談をもとに、一部内容を変更してお話しします。

※個人が特定されないよう、事実関係を一部変更しています。

「私がいなくなったら、この人はどうなるんだろう」

ある男性が再婚して間もない頃、大きな病気が見つかりました。

医師から告げられたのは、厳しい現実でした。

男性は、自分の命が長くないことを悟ります。

そして、残される奥様のことを考えました。

「自分がいなくなった後、この人が困らないようにしたい」

男性には前の結婚で生まれたお子さんがいました。

しかし、長い間交流はなく、奥様も一度も会ったことがありませんでした。

それでも法律上、お子さんたちは相続人です。

男性は、自分なりにできる準備を始めました。

ご主人が亡くなった後

やがて男性は亡くなりました。

相続人の調査を進める中で、会ったことのないお子さんたちへ連絡を取る必要がありました。

その際、

「いきなり相続手続きの書類が届くよりも、先にお手紙でご事情をお伝えしてはいかがでしょうか」

とご提案しました。

突然、相続に関する書類や連絡が届けば驚かれる方もいらっしゃいます。

そこで、まずはお父様が亡くなられたことと、今後相続手続きが必要になることを丁寧にお伝えすることにしたのです。

会ったこともないお子さんたちです。

どのような反応が返ってくるか分かりません。

それでも、最初のご連絡だからこそ、できるだけ誠実にお伝えしたいと考えました。

二人の相続人、それぞれの想い

その後、お子さんたちへ連絡を取りました。

お一人は、

「もう父とは関わりたくありません」

とおっしゃいました。

長い年月の中で、様々な事情があったのでしょう。

一方、もうお一人は話し合いに応じてくださいました。

当初は一定の金額で話がまとまりそうでしたが、その後、

「私には法律上の権利があるはずです」

というお話になりました。

もちろん、それは間違いではありません。

相続人には法律で認められた権利があります。

相続は感情だけではなく、法律のルールの中で進めなければならないからです。

再婚家庭では、前の結婚のお子さんが相続人になることがあります。
「会ったことがない相続人」と手続きを進めるケースも決して珍しくありません。

▶「親が再婚していた場合の相続|前妻の子も相続人になる?」

ご主人が遺していた一通の遺言書

幸い、ご主人は自筆の遺言書を残していました。

しかし、遺言書があれば必ず希望どおりになるとは限りません。
相続人には遺留分という権利があり、内容によっては後から請求を受けることもあります。

▶ 「遺言書があっても安心できない?遺留分トラブルと対処法を解説」

その遺言書には、

「妻に財産を残したい」

というご主人の意思が示されていました。

もっとも、遺言書があれば全て自由にできるわけではありません。

相続人には遺留分という最低限の権利があります。

そのため、最終的には遺留分にも配慮しながら手続きを進めることになりました。

それでも、遺言書があったことで、ご主人の意思を実現する道が残されていたのです。

もし遺言書がなければ、結果は大きく違っていたかもしれません。

想いだけでは守れないことがある

ご主人は奥様を愛していました。

だからこそ、自分にできる準備を考えたのでしょう。

しかし、どれほど強い想いがあっても、相続には法律上の手続きが必要です。

相続税の申告が必要になることもあります。

相続人への連絡も必要です。

遺言書があっても、何もしなくてよいわけではありません。

それでも、遺言書があったからこそ守れた想いがあります。

相続は人と人との話でもある

相続というと、財産を分ける手続きと思われがちです。

もちろん、それも大切です。

しかし、私は相続の現場で、

「人と人との関係」

の方がずっと大きいと感じることがあります。

ご主人は奥様を想っていました。

奥様は会ったことのないお子さんたちへの配慮を忘れませんでした。

お子さんたちにも、それぞれの人生や想いがありました。

相続は、お金だけの話ではありません。

だからこそ、元気なうちにご自身の意思を遺言書などで形にし、できればご家族へ想いを伝えておくことが大切なのではないでしょうか。

相続で一番大切なのは、財産を残すことだけではありません。
残されたご家族が困らないように、元気なうちから準備をしておくことです。

▶「子どもがいない夫婦の相続対策|遺言書が必要な理由」

まとめ

再婚家庭では、会ったことのない相続人がいることも珍しくありません。

そして、相続が始まったときに初めて、その存在と向き合うことになる場合もあります。

「自分が亡くなった後、大切な人にどう過ごしてほしいのか」

そんな想いがある方は、元気なうちに準備をしておくことをおすすめします。

行政書士あぐいまき事務所では、遺言書作成や相続対策のご相談を承っております。

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