証券口座の相続は「移管」が基本!株式・投資信託を相続したときの手続きと評価ルール

「亡くなった父が株を持っていたけれど、私は株なんてやったことがない……」
「すぐに現金化して、兄弟で分けたいんだけど、どうすればいいの?」

相続のご相談を受ける中で、銀行預金と同じくらい多いのが「有価証券(株式や投資信託など)」の相続についてです。

実は、有価証券の相続は、現金や預金の手続きとは少しルールが異なります。
今回は、有価証券の基礎知識から、意外と知られていない「口座開設」の必要性、そして気になる「評価方法」について解説します。


1. そもそも「有価証券」とは?

有価証券とは、簡単に言うと「それ自体に財産的価値がある証券」のことです。

代表的なものには次のようなものがあります。

  • 上場株式(証券取引所で売買される企業の株)
  • 投資信託(運用の専門家にお任せする商品)
  • 国債・社債(国や会社にお金を貸している証明書)

現金との大きな違い

現金や預金は「100万円」なら、どこまでいっても「100万円」です。
しかし、有価証券は日々価格が変動するという特徴があります。

そのため、

  • いつの時点の価格で分けるのか
  • 相続税をどの価格で計算するのか

という**「評価」の考え方**がとても重要になります。


2. 現金化したくても、まず口座開設が必要

ここが、有価証券相続で一番の落とし穴です。

銀行預金の場合、相続手続きをすれば解約して現金で受け取ることができます。
しかし、有価証券の場合は原則として

亡くなった方の口座から、相続人の口座へ「移管」する

という手続きが必要になります。

なぜ口座を作らなければならないの?

証券会社にとって、株や投資信託はお客様から預かっている大切な資産です。

これを売却して現金化するには、

名義人本人が売却注文を出す

という手続きが必要になります。

そのため、

  1. 相続人名義の証券口座を開設
  2. 亡くなった方の口座から株式を移管
  3. 相続人が売却手続きを行う

という流れになります。

ポイント
被相続人(亡くなった方)が口座を持っていたのと同じ証券会社で口座を作ると手続きがスムーズです。


3. 有価証券の評価はどう決まる?

相続では、「いくらとして計算するか」という評価が2つの場面で登場します。

① 遺産分割協議での評価(相続人で分けるとき)

相続人同士で「誰がどの株をもらうか」を決める場合、一般的には

遺産分割協議時の時価

を参考にすることが多いです。

株価は日々変動するため、公平に分けるための工夫が必要になります。


② 相続税の申告での評価(国への申告)

相続税がかかる場合、上場株式の評価額は次の4つの価格のうち最も低いものを採用できます。

  • 亡くなった日の終値
  • 亡くなった月の毎日の終値の平均額
  • 亡くなった前月の終値の平均額
  • 亡くなった前々月の終値の平均額

株価は急騰・急落することがあるため、納税者に不利にならないよう、このようなルールが設けられています。


相続税がある場合・ない場合の違い

項目相続税がかかる人(基礎控除超)相続税がかからない人(基礎控除内)
評価の必要性必須。 4つの価格を調べて、最も低い価格を算出する必要がある。厳密な計算は不要だが、遺産分割のために時価を把握する必要はある。
申告手続き税務署への申告が必要。税務署への申告は不要。
口座の移管必須。 納税資金のために売却する場合も、移管手続きが必要。必須。 名義変更をしないと、将来的に売却や配当受取ができない。

4. 有価証券の相続で忘れがちな「配当金」の落とし穴

有価証券の相続で、意外と見落としがちなのが配当金の受け取り手続きです。

株そのものを相続人の証券口座へ移管しただけでは、
過去に発生していた未払い配当金を自動的に受け取れない場合があります。

なぜ信託銀行への連絡が必要?

上場企業には、株主名簿を管理し配当金の支払いを行う
「株主名簿管理人」という存在があります。

多くの場合、この業務を信託銀行が担当しています。

役割を簡単に整理すると次の通りです。

証券会社
株式の売買や保管を行う

信託銀行(株主名簿管理人)
配当金の支払い、株主名簿の管理を行う

そのため、

  • 未払い配当金がある場合
  • 証券会社に預けていない「特別口座」の株式がある場合

などは、株主名簿管理人である信託銀行へ個別に連絡し、相続手続きを行う必要があります。

放置すると受け取れなくなることも

配当金には時効(除斥期間)があり、通常は5年を過ぎると受け取る権利が消滅します。

「数百円だから」と思っていても、複数の銘柄があると合計でまとまった金額になることもあります。

証券口座の相続手続きとあわせて、未払い配当金の有無も確認することが大切です。


おわりに

有価証券の相続は、

  • 証券会社との手続き
  • 相続人の口座開設
  • 配当金の確認

など、預金とは異なる手続きが多く、思った以上に手間がかかることがあります。

また、

「亡くなった方がどこの証券会社に口座を持っていたのか分からない」

というご相談も少なくありません。

当事務所では、行政書士としての法務知識と、不動産処分のノウハウを活かし、有価証券を含む複雑な相続手続きをワンストップでサポートしております。

相続手続きでお困りのことがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

行政書士あぐいまき事務所

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です